家族や夫婦で障害福祉事業を開業するとき、給与や社会保険より先に決めるべきなのが「誰を役員にするか」と「どの法人形態で作るか」です。役員は指定申請の欠格審査の対象になり、法人形態によっては親族の人数に上限があります。この記事では、大阪府で家族経営の障害福祉法人を設立する方に向けて、役員構成、法人形態の親族制限、役員報酬と創業融資、公私混同、事業承継を、障害福祉専門の税理士が法令の原文をもとに解説します。

役員構成と役員報酬は創業融資の審査で見られます

誰が経営責任を負い、家族にいくら払い、返済できるかは創業計画書の核です。融資の計画と一緒に組み立てたい方はHands On会計事務所の融資・補助金・資金繰り支援ページをご覧ください。Hands On会計事務所は認定経営革新等支援機関です。

家族経営の障害福祉法人では、誰を役員にすべき?

役員にするのは、経営の判断と責任を引き受ける家族だけにするのが基本です。現場だけを担う家族は、従業員として雇うほうが実態に合います。役員とは、株式会社の取締役、合同会社の業務執行社員、NPO法人や一般社団法人の理事のように、法人の意思決定と業務執行に責任を負う人をいいます。

指定申請では、この役員が審査されます。障害者総合支援法36条3項は、法人の役員等に、拘禁刑以上の刑の執行が終わっていない人や、指定を取り消された法人で取消処分の通知前60日以内に役員だった人(取消しから5年以内)などがいる場合、指定をしてはならないと定めています。親族かどうかは審査基準ではありませんが、役員を増やすほど審査対象が増えます。様式は、指定申請の窓口となる指定権者の手引きで確認してください。

資金を出して経営判断をする人が代表者、経営に関わりながら現場にも入る人が役員、それ以外は従業員が目安です。

役員報酬・従業員給与・社会保険は、家族・夫婦で開業するときの給与・社会保険の解説にまとめています。

法人形態で家族役員の扱いはどう違う?|親族制限がある法人・ない法人

夫婦や親子だけで役員を固めたいなら、株式会社か合同会社です。NPO法人と社会福祉法人には親族の人数制限があり、家族だけでは役員を構成できません。指定は法人でなければ受けられないため、この選択が開業の最初の分かれ道です。

法人形態 役員の最低人数 親族に関する制限 家族経営との相性
株式会社取締役1人以上(会社法326条)なし1人でも夫婦でも可。株式で承継
合同会社社員(出資者)1人以上。原則として社員が業務執行(会社法590条)なし設立費用が安い。社員の死亡は原則退社のため、定款で持分の承継を定める(会社法607条・608条)
NPO法人理事3人以上・監事1人以上(NPO法15条)各役員につき配偶者・三親等以内の親族は1人まで。役員と親族の合計は役員総数の3分の1以下(21条)夫婦2人を役員にするなら親族でない役員が4人以上必要
一般社団法人理事1人以上(一般社団法人法60条)なし。ただし法人税の非営利型は、各理事とその親族が理事総数の3分の1以下(法人税法施行令3条)家族だけで設立できるが、普通法人として課税
社会福祉法人理事6人以上・監事2人以上(社会福祉法44条3項)各理事の親族は3人まで、かつ理事総数の3分の1以下。監事に役員の親族は不可(同条6項・7項)家族だけでは構成できない。所轄庁の認可制

開業時点で家族2〜3人しか役員候補がいないなら、株式会社か合同会社が現実的です。設立費用や税務の違いは開業1年目の税務・会計の基礎知識、開業までの全体像は福祉事業の開業支援ページをご覧ください。

家族役員の役員報酬はどう決める?|創業融資の審査との関係

役員報酬は「家族の生活に必要な額」を先に決め、その額を払っても返済できる収支計画を作る順番で決めます。役員報酬は原則として毎月同額(定期同額給与)でなければ損金にならず、改定は事業年度開始から3か月以内などに限られます(法人税法34条1項1号・国税庁No.5211)。家族2人分の配分の考え方は解説サイト(hands-on-tax.com)の障害福祉事業の役員報酬の決め方で解説しています。

創業融資で注意したいのは、計画を良く見せるために役員報酬をゼロや極端に低くしないことです。日本政策金融公庫の創業計画書には常勤役員の人数を書く欄があり、「事業の見通し」の人件費には法人の役員報酬も含めます。生活費が計画に入っていないと「開業後に法人から生活費を引き出すのではないか」と読まれます。実際にそうなると役員貸付金が増え、追加融資で不利に働きやすくなります。

創業融資は認定支援機関の税理士に相談できます

日本政策金融公庫や大阪府の制度融資の創業計画書・収支計画を、審査する側の目線で一緒に作ります。家族の役員報酬で返済がどう変わるかを数字で確認し、開業後の資金繰りまで同じ税理士が担当します。Hands On会計事務所は認定経営革新等支援機関です。初回のヒアリングはオンラインで無料、単発でもご相談いただけます。

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家族経営で最も多い失敗は「公私混同」|役員貸付金と実地指導

家族経営の障害福祉法人で最も多い失敗は、法人のお金と家計の線引きが崩れることです。生活費の引き出し、法人カードでの私物購入、法人の車の私用。こうした支出は、帳簿では役員貸付金か役員給与になります。

  • 役員貸付金にした場合:無利息や低い利率で貸すと、通常の利率との差額が役員への経済的利益=給与扱いになります(国税庁No.5202)。残高は決算書に載り、金融機関は資金流出と見ます。
  • 給与にした場合:役員の個人的費用を法人が負担した額は役員給与とされ、毎月おおむね一定でない限り定期同額給与に当たらず損金になりません(法人税法34条・No.5202)。

実地指導(運営指導)でも問われます。家族が管理者やサービス管理責任者・児童発達支援管理責任者を兼ねる場合、勤務表・出勤記録と役員報酬や給与の額が実際の勤務と合っているかを確認されます。管理者は、事業所ごとに専らその職務に従事する人を置くのが原則で、事業所の管理上支障がない場合に限り、同じ事業所の他の職務と兼務できます(就労継続支援B型は指定基準199条で準用する51条、放課後等デイサービス・児童発達支援は児童通所基準7条〔放デイは67条で準用〕)。グループホームと居宅介護では、管理者が常勤であることも要件です(同基準209条・6条)。サービス管理責任者などの要件は家族でも同じで、書類上だけの配置は人員基準違反となり、不正請求と認定されれば報酬の返還(加算金つき)を求められます(障害者総合支援法8条2項)。税務調査での見られ方は、解説サイト(hands-on-tax.com)の障害福祉事業の税務調査で確認される5つのポイントで解説しています。

事業承継を見据えて、開業時に役員設計しておくこと

指定は法人に対して行われるため、代表者が交代しても法人が同じなら指定はそのまま続きます。代表者の氏名や住所など登記事項に関わる変更は、変更から10日以内に指定権者へ届け出ます(障害者総合支援法46条1項・施行規則34条の23。大阪府では変更届出書に履歴事項全部証明書と、欠格事由に該当しない旨の誓約書を添えます)。代表者以外の役員交代を届出対象にするかは指定権者で運用が異なるため、手引きで確認してください。

法人の「所有」の引き継ぎ方は法人形態で変わります。株式会社は株式を後継者に移せばよいのですが、合同会社は社員が死亡すると原則退社になるため(会社法607条1項3号)、定款で相続人が持分を承継できる定めを置きます(608条)。NPO法人や一般社団法人には出資持分がなく、承継は後継者を理事に選任して行い、法人の財産は家族が相続できません。

株式会社の取締役の任期は原則2年で、非公開会社は定款で最長10年に伸ばせます(会社法332条)。同じ人が続けるときも改選と登記が必要です。

開業前に家族で決めておく5つのこと

  1. 役員と従業員に分ける。経営責任を負う家族だけを役員にする。
  2. 法人形態を決める。家族だけなら株式会社か合同会社。
  3. 役員報酬は生活費から逆算し、返済できる創業計画にする。
  4. 法人と家計の口座・カードを分ける。役員貸付金を作らない。
  5. 承継と任期を定款に落とす。改選時期を記録する。

よくあるご質問

Q1. 夫婦2人だけでNPO法人を作って障害福祉事業を始められますか?

役員が夫婦2人だけでは設立できません。NPO法人は理事3人以上と監事1人以上が必要で、各役員につき配偶者や三親等以内の親族は1人まで、役員と親族の合計は役員総数の3分の1以下です(NPO法15条・21条)。夫婦を役員にするなら親族でない役員が4人以上必要です。

Q2. 妻(夫)を役員兼管理者にして、現場の支援員も兼ねられますか?

管理者は事業所ごとに専らその職務に従事する人を置くのが原則ですが、事業所の管理上支障がない場合は同じ事業所の他の職務と兼務できます(グループホームと居宅介護では常勤であることも要件です)。役員であることは妨げになりません。実地指導で勤務表と役員報酬・給与の整合を確認されるため、職務ごとに勤務時間を記録します。兼務の細部は指定権者の手引きで確認してください。

Q3. 法人のお金を一時的に生活費に使い、後で返せば問題ありませんか?

後で返しても、返すまでは役員貸付金として決算書に残り、無利息なら通常の利率との差額が役員への給与扱いになります(国税庁No.5202)。生活費は最初から役員報酬として設計します。

まとめ

  • 役員は経営責任を負う家族だけ。現場を担う家族は従業員に
  • 家族だけで役員を構成できるのは株式会社と合同会社。NPO・社会福祉法人には親族の人数制限がある
  • 役員報酬は生活費から逆算し、返済できる創業計画にする
  • 公私混同は役員貸付金か損金にならない給与になる。実地指導では勤務実態と報酬の整合を見られる
  • 指定は法人に付く。持分の承継と役員の任期は開業時に定款へ落とす

家族で障害福祉事業の法人設立を検討している方へ

Hands On会計事務所の税理士は、税理士法人で6年、障害福祉の現場で4年の経験があります。役員構成と法人形態から創業融資、開業後の会計まで同じ税理士が担当します。初回のご相談は無料です。

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参考資料

執筆・監修:税理士 栗谷川 雄介(登録番号 第157826号)/Hands On会計事務所(大阪府柏原市・障害福祉専門の税理士事務所)。最終更新日:2026年9月25日。役員要件は2026年9月時点の条文で確認しています。改正されることがあるため最新をご確認ください。


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