就労継続支援B型を令和8年6月1日以降に新規で開業すると、基本報酬は初年度「平均工賃月額1万円未満」の区分とみなされ、さらに1000分の984の応急的な報酬単価が適用されます。定員20人・人員配置7.5対1なら1日528単位です。この記事では、この単価を使って開業費用の内訳と開業後12か月の収支・資金繰りを試算し、運転資金をいくら用意すべきかの計算手順を示します。

先に結論:下の前提では、運転資金が約900万円必要になります

下の試算では開業後の資金不足の累計が最大で約900万円になります。創業融資の計画から相談したい方は、Hands On会計事務所の融資・補助金・資金繰り支援ページをご覧ください。Hands On会計事務所は認定経営革新等支援機関です。

指定要件や人員基準、申請の流れは就労継続支援B型の開業ガイドで解説しています。

B型の開業費用の内訳

障害福祉サービスの指定は法人でなければ受けられないため、費用は法人設立から始まります。B型の開業費用について公的な標準額はなく、物件と生産活動の内容で大きく変わります。金額は必ず見積書で積み上げてください。

費用項目 中身 金額の決め方
法人設立登録免許税、定款認証など法人の種類で決まる
物件取得保証金・敷金、仲介手数料、前家賃賃料の月数で決まる。契約書案で確認
内装・設備訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、消防設備工事見積。消防・建築の適合確認が先
生産活動の機材作業用の機械、什器、材料の初回仕入れ作業内容で大きく変わる
備品・車両机・椅子、パソコン、請求ソフト、送迎車両送迎を行うかで変わる
開業前の人件費求人費、指定前から雇う職員の給与指定申請時点で人員の確保が必要
運転資金報酬が入るまでの人件費・家賃下の資金繰り表で計算する

業種を問わない参考値として、日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、開業費用の平均は975万円、中央値は600万円、開業時の資金調達額は平均1,219万円(うち金融機関等からの借入が平均827万円、自己資金が平均279万円)でした。全業種の数字(公庫の融資を受けて開業した企業が対象)なので、B型の目安としてではなく、自分の見積りが極端でないかを見る物差しとして使ってください。

新規指定のB型の報酬単価|令和8年6月以降は2つのルールが重なる

(1)初年度は「平均工賃月額1万円未満」とみなされる

B型の基本報酬は前年度の平均工賃月額で区分が決まりますが、新規指定の事業所には実績がありません。そのため初年度の1年間(年度途中の指定は2年度目まで)は、最も低い「1万円未満」の区分で算定します。ただし、支援の提供を始めてから6か月が過ぎた月からその年度の3月までは、最初の6か月間の平均工賃月額に応じた区分で算定できます。

(2)応急的な報酬単価の特例(1000分の984)

令和8年度報酬改定で、令和8年6月1日以降に新規指定されたB型事業所には、令和9年度報酬改定までの間、基本報酬を所定単位数の1000分の984とする特例が設けられました。離島・中山間地域の事業所や、自治体の公募・補助を受けて設置する事業所、一部の加算を算定する場合などは対象外とする配慮措置があります。合併・事業譲渡などで実質的に運営が続くと認められる場合は既存事業所と同じ扱いになり、既存事業所の定員増や従たる事業所の追加は新規指定ではないため、いずれも対象になりません。

定員20人以下の基本報酬(1日) 所定単位数 特例適用後
サービス費(Ⅱ)7.5対1・平均工賃月額1万円未満537単位528単位
サービス費(Ⅲ)10対1・平均工賃月額1万円未満490単位482単位
サービス費(Ⅱ)7.5対1・1万5千円以上1万8千円未満596単位586単位

特例適用後の単位数は、所定単位数に1000分の984を掛けて小数点以下を四捨五入した当事務所の計算値です。請求の際は指定権者の案内と請求ソフトの表示で確認してください。

開業後12か月の収支シミュレーション

次の前提で試算します。

  • 定員20人、月22日開所(稼働率100%で延べ440人日)、サービス費(Ⅱ)、特例適用後528単位
  • 1単位10円で計算(実際の1単位の単価は所在地の地域区分とサービスの種類で決まります)。加算と処遇改善加算は含めません
  • 稼働率は1か月目20%から12か月目85%まで段階的に上がると仮定
  • 固定費(職員の人件費・家賃・水道光熱費・その他)は月180万円と仮置き。公的な標準値はないため、計算手順を示すための数字です。ご自身の見積りに置き換えてください
  • 報酬はサービス提供月の2か月後に入金されるものとして計算
  • 開業前の支出(内装・設備など)、借入金の返済、法人税・消費税の納付は含めません
月 稼働率 報酬(発生額) 月次損益 その月の入金 資金の累計
1か月目20%464,640円▲1,335,360円0円▲1,800,000円
3か月目40%929,280円▲870,720円464,640円▲4,935,360円
6か月目60%1,393,920円▲406,080円1,161,600円▲7,547,520円
9か月目75%1,742,400円▲57,600円1,510,080円▲8,765,760円
10か月目80%1,858,560円58,560円1,626,240円▲8,939,520円
11か月目80%1,858,560円58,560円1,742,400円▲8,997,120円
12か月目85%1,974,720円174,720円1,858,560円▲8,938,560円

この前提では、月次の損益が黒字になるのは10か月目、資金不足の累計が最も深くなるのは11か月目の約900万円です。損益が黒字になっても、入金が2か月遅れるぶん資金の底は後ろにずれます。この「累計の底」に余裕を足した額が、用意すべき運転資金です。

なお、最初の6か月の平均工賃月額が1万5千円以上1万8千円未満になり、7か月目から586単位で算定できた場合は、同じ前提で月次の黒字化が8か月目に早まります。

黒字になる稼働率を逆算する

損益が均衡する稼働率は「月の固定費÷(単位数×10円×440人日)」で計算できます。

月の固定費 528単位のとき 586単位のとき
160万円68.9%62.1%
180万円77.5%69.8%
200万円86.1%77.6%

創業融資は認定支援機関の税理士に相談できます

日本政策金融公庫や大阪府の制度融資で開業資金を借りるときの創業計画書・資金計画・収支計画を、審査する側の目線で一緒に作ります。面談で聞かれる論点の準備から、開業後に国保連の入金が始まるまでの資金繰りまで、同じ税理士が続けて担当します。

Hands On会計事務所は認定経営革新等支援機関です。初回のヒアリングはオンラインで無料、顧問契約がなくても単発でご相談いただけます。支援の内容はHands On会計事務所の融資・補助金・資金繰り支援ページ(hands-on-tax.com)にまとめています。

融資・資金繰り支援ページを見る(hands-on-tax.com)

リンク先:Hands On会計事務所 解説サイト(hands-on-tax.com)

試算に入れていないもの|生産活動と工賃は別の財布

上の試算には生産活動の売上を入れていません。B型は、生産活動の収入から必要経費を引いた額を工賃として利用者に支払う決まりで(指定基準201条1項)、生産活動の利益は事業所の運営費には回りません。工賃の月平均は3,000円を下回れません(同条2項)。

報酬は消費税が非課税ですが、生産活動の売上は課税取引です。開業後の処理は、解説サイト(hands-on-tax.com)の就労継続支援B型と消費税、B型の工賃と就労支援事業会計で解説しています。

黒字化を早めるために開業前にできること

  • 固定費を先に決めすぎない:家賃と常勤職員の数は、上の逆算表で必要な稼働率を確認してから決めます。
  • 利用者確保の経路を開業前に作る:相談支援事業所や特別支援学校へのあいさつと情報提供は指定前から始められます(利用契約は指定後)。具体策は開業後の利用者確保と稼働率をご覧ください。
  • 最初の6か月の工賃を設計する:受注先と単価を開業前に固めます。
  • 資金繰り表を融資の申込前に作る:書き方は開業後6か月の資金繰りを参考にしてください。

B型以外のサービスと比べて決めたい方は、障害福祉サービスの選び方もあわせてご覧ください。

よくあるご質問

Q1. 定員10人でB型を開業できますか?

B型の利用定員は20人以上が原則です。10人以上で認められるのは、離島などで都道府県知事が認める場合に限られます。ほかのサービスと一体で運営する多機能型には定員の特例があります。

Q2. 令和8年5月までに指定を受けた事業所にも特例単価はかかりますか?

かかりません。対象は令和8年6月1日以降に新規指定された事業所で、既存の事業所は従前どおりです。特例は令和9年度報酬改定までの措置とされ、その後は改めて議論される予定です。

Q3. 特例単価は加算にもかかりますか?

特例は基本報酬の単価に対するものです。加算の算定要件は通常どおりで、どの加算を取れるかは人員体制で決まります。試算では、加算を入れた場合と入れない場合の両方を作っておくと安全です。ただし、福祉・介護職員等処遇改善加算は基本報酬と各加算の合計に加算率を掛けて計算するため、基本報酬が1000分の984になると、その分だけ加算額も小さくなります。処遇改善加算は職員の賃金改善に充てる加算なので、この記事の試算には入れていません。

まとめ

  • 令和8年6月1日以降の新規指定のB型は、初年度1万円未満の区分+1000分の984。定員20人以下・7.5対1で528単位
  • 基本報酬だけで見ると、固定費180万円なら損益が均衡する稼働率は77.5%
  • 入金は約2か月遅れ。試算では資金不足の累計が約900万円まで深くなる
  • 生産活動の利益は工賃に回るため、運営費の計画には入れない
  • 最初の6か月の平均工賃月額で、7か月目以降の報酬区分を上げられる

自分の計画の数字で試算したい方へ

Hands On会計事務所の税理士は、税理士法人で6年、障害福祉の現場で4年の経験があります。物件と人員の案をうかがい、収支と資金繰りの表を一緒に作ります。初回のご相談は無料です。

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参考資料


住宅リフォーム7

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